相続放棄と相続税の関係を解説|放棄しても相続税がかかるケースとは
【この記事でわかること】
・相続放棄をした場合の相続税の基本的な取り扱い
・相続放棄しても相続税がかかる財産の種類(生命保険・死亡退職金など)
・相続放棄が基礎控除の計算に与える影響
・相続放棄後に相続税の申告が必要なケース
・放棄と相続税の判断を間違えないためのポイント
「相続放棄をしたから、相続税は関係ないと思っていたら税務署から通知が来た」
「放棄したのに、なんで税金を払わないといけないの?」
「相続放棄をすれば相続税も関係ない」と思っている方は少なくありません。しかし、相続放棄をしても一定の財産については相続税の対象になることがあります。この記事では、相続放棄と相続税の関係を正しく解説します。
目次
相続放棄をした場合の相続税の基本
相続放棄をすると、その人は「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます。原則として放棄した人は相続財産を受け取らないため、相続税の納付義務も発生しません。
しかし、以下の財産については例外的に相続税の対象になることがあります。
相続放棄しても課税される財産①|生命保険の死亡保険金
生命保険の死亡保険金は、「受取人固有の財産」です。受取人が相続放棄をしても、死亡保険金を受け取ること自体は可能で、受け取った場合は相続税の対象になります。
ただし、相続放棄をした場合は生命保険の非課税枠が縮小します。
生命保険の非課税枠の計算
- 相続放棄をしていない場合:500万円 × 法定相続人の数
- 相続放棄をした場合:放棄した人は非課税枠の計算から除かれない(人数としてはカウントされる)が、放棄した人自身が受け取った保険金には非課税枠が適用されない
つまり、相続放棄をした人が死亡保険金を受け取ると、非課税枠なしで全額が相続税の課税対象となります。
相続税の基礎控除と非課税枠については、こちらも参考にしてください。
→ https://dept-zero-navi.com/souzoku-zei-kiso-hikazei-waku
相続放棄しても課税される財産②|死亡退職金
死亡退職金も生命保険と同様に「みなし相続財産」として扱われ、相続放棄をしても受け取れる場合があります。受け取った場合は相続税の対象になり、相続放棄をした場合は非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されません。
相続放棄が基礎控除の計算に与える影響
相続放棄をした場合でも、基礎控除の計算上は法定相続人の数にカウントされます。
たとえば法定相続人が3人(配偶者・子ども2人)の場合、子ども1人が相続放棄をしても、基礎控除額の計算は「3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円」のまま変わりません。
これは相続放棄した人を税制上の不利にしないための仕組みです。
相続放棄後に相続税の申告が必要なケース
相続放棄をした場合でも、以下のケースでは相続税の申告が必要になります。
ケース①:生命保険・死亡退職金を受け取った場合
受け取った金額が相続税の課税対象となるため、申告が必要です。
ケース②:放棄した相続人以外の相続人の課税遺産総額が基礎控除を超える場合
放棄した本人は申告不要でも、他の相続人が申告する際に影響が出ることがあります。
ケース③:放棄前に財産の一部を受け取っていた場合
放棄前に相続財産の一部を受け取っていた場合、単純承認とみなされ相続税の対象になる可能性があります。
相続放棄を検討する際の税務上の注意点
生命保険の受取人の確認
相続放棄を検討する際は、生命保険の受取人が誰になっているかを確認しましょう。受取人が「相続人」と指定されている場合、放棄後も保険金を受け取れますが、非課税枠なしで課税されます。
放棄と遺贈の違い
相続放棄をした後に遺言による「遺贈」で財産を受け取った場合、その遺贈財産には相続税がかかります。
税理士への相談を早めに
相続放棄と相続税の関係は複雑です。特に生命保険の非課税枠・遺産総額が基礎控除に近い場合は、税理士に相談してから放棄の判断をすることをおすすめします。
相続放棄と相続税の判断フロー
相続放棄を検討している方は、以下の順番で確認してみましょう。
- 遺産総額(プラス・マイナス両方)を把握する
- 生命保険・死亡退職金の受取人を確認する
- 基礎控除額を計算して相続税がかかるかどうか確認する
- 放棄した場合の税務上の影響を税理士に確認する
- 放棄するかどうかを判断する
3カ月の熟慮期間内に判断する必要があるため、早めに動き始めることが重要です。
相続財産の調査については、こちらも参考にしてください。
→ https://dept-zero-navi.com/souzoku-zaisan-chousa
よくある質問
Q1. 相続放棄をした後に生命保険の死亡保険金を受け取ることはできますか?
A. 受取人として指定されていれば受け取ることができます。ただし、相続放棄をした場合は非課税枠が適用されず、受け取った全額が相続税の課税対象になります。
Q2. 相続放棄をすると相続税の基礎控除額が減りますか?
A. 減りません。基礎控除の計算上は、相続放棄をした人も法定相続人の数にカウントされるため、基礎控除額は変わりません。
Q3. 相続放棄をした人は相続税の申告書に名前を載せる必要がありますか?
A. 放棄した人が財産を受け取っていなければ、原則として申告書への記載は不要です。ただし、生命保険・死亡退職金を受け取った場合は申告が必要です。
Q4. 相続放棄の手続きと相続税の申告期限は別々ですか?
A. はい、別々です。相続放棄は相続を知った日から3カ月以内、相続税の申告は死亡を知った日の翌日から10カ月以内が期限です。それぞれの期限を確認して対応してください。
まとめ
相続放棄と相続税の関係をまとめます。
- 相続放棄をしても生命保険・死亡退職金を受け取った場合は相続税の対象になる
- 相続放棄をした人が保険金等を受け取ると非課税枠が適用されない
- 基礎控除の計算では放棄した人も法定相続人の数にカウントされる(控除額は変わらない)
- 相続放棄の前に生命保険の受取人確認と税務上の影響を確認する
- 複雑なケースは税理士への相談を早めに行う
- 放棄の期限(3カ月)と申告の期限(10カ月)は別々に管理する
「放棄したから安心」とは言い切れません。税務上の影響を正確に把握してから放棄を判断しましょう。